第32章 立ち込める暗雲
返事はない。音もしない。
幻聴だったのか、いやそんなはずない。
アーケード街から伸びる薄暗い路地裏を一つ一つ覗いていく。
雨の匂いでかき消されていた何かが焼けたような臭いが段々と近づいてきた。
臭いの発生源を思われる路地裏の入り口で再度声をかける。
「何かありましたか!?
すごく焦げ臭いんですけど……」
近付けば近付くほど臭いが濃い……。
鼻が曲がりそうだった。
すると路地裏の奥の暗闇からカツンカツンと歩く音がした。
こっちに向かってきているようだ。
奥から歩いてきた人の全貌が見え、驚きが隠せない。
「あなたは………」
「よォ、ようやく会えたな。クラウディア。」
「敵連合の………荼毘……!」
忘れもしない、
あの林間合宿の際、私の目の前で生徒を攫った。
私の勤務していたあの暖かい街に化け物をけしかけた。
ツギハギだらけのイカレた男。