第32章 立ち込める暗雲
しばらく帰路を進むと
段々と雲行きが怪しくなってきた。
今にも雨が降り出しそうな濃いグレーの雲が空に広がっている。
雨が降っても個性で凌げるが、特別急いでいるわけでもない。
この辺りで少し休息を挟もうと街に降りる為、高度を落とした。
やはり、ポツポツと雨が降ってきて次第に勢いを増していった。
街中で堂々と雲から降りると目立つので少し路地を入った所で雲から降りた。
とりあえずは雨が弱くなるのを待ってからご飯でも食べようかな、とぼんやり頭で考えながら少し路地を進みアーケードがある所で雨宿りをした。
辺りには人がいない。
アーケード街のようだが、どの店もシャッターが降りていた。
雨が降っているのもあるが元々廃れた商店街なのかもしれない。
とても静かで雨のあとだけが大きく耳に響く。
しばらく待ってみたが雨が弱まる気配はなく、雨避け用に頭上に雲を出して少し歩こうとアーケード街を出ようと足を踏み出した瞬間だった。
「ギャア!!」という叫び声と何かが壁にぶつかったような鈍い音、そして鼻につくような何かが焼ける臭い。
ハッと振り返るも、微かな物音だった為、詳しい位置がわからない。
臭いも雨の匂いにすぐにかき消されてしまった。
とにかく音が聞こえた方へとアーケード街の中へ進む。
周囲を警戒しながら、声をかけた。
「叫び声が聞こえましたが、どうかされましたか?」
「誰か、いますか?」