第30章 シンプル
ホークスの家に着いて、玄関の前に降りた。
「送ってくれてありがとうございました。」
「相変わらず、良いマンション住んでるな〜。」
「泊まっていきます?」
「結構です!」
ホークスがニヤニヤしながら雲から降りている。
段々と普段の調子に戻ってきたようだ。
「ねぇ、ホークス。
なんか手伝えることあったら、言ってね。」
私にできることは限られているかもしれない。
でも、だからって何もしないのはヒーローじゃない。
「前に言ってくれたじゃない?
『俺だったらすぐ駆けつけられる』って。
私だってすぐ駆けつけられるんだから。」
だからそんなに一人で抱え込まないで。
「……じゃあ、ひとつだけ。
今から俺が言う事する事、全部忘れて下さい。」
「うん?」
俯きながら呟いたホークスは私との距離を詰め、そのまま抱きしめられた。
びっくりした私はすぐに押し返そうと身体に力を込めたが、ホークスの身体が微かに震えているように感じた。
やはり今日の彼はいつもと雰囲気が違う。
私はホークスの背中にそっと手を回し、子供をあやすようにトントンと叩いた。
しばらくそのまま、ホークスが落ち着くのを待った。
「………霞さんが好きです。」
耳元でそう囁かれ、
ホークスの抱きしめる力が強くなった。