第29章 心配のその先
「……ごめん。
トレーニングの邪魔するつもりはなかったんだけど……。」
「いや……。
心配してくれたんだな。
ありがとね。」
チラッと消太くんを見るとククッと笑っている。
そのままこちらに近づいてきて、私の頭をグシャッと撫でた。
「霞には充分助けてもらってるよ。
授業もそうだが、エリちゃんのことや心操のことも。」
これ以上できることはない…ということか。
ハァ……とため息をついた。
「なんだよ。不満か?」
「別に〜。
まだまだだなって思っただけ。」
「……じゃあ、また相手してくれよ。
この前の手合わせ、楽しかったから。」
「やる!!任せてよ!!!」
きっと今の私に犬の尻尾が生えていたらブンブンと振り回しているだろう。
それくらい目を輝かせて即答した。
「ハハッ、ほんと変なやつ!」
声を出して笑っている消太くんを見たのは高校生以来のような気がした。
心臓がドキドキと脈打つ。
やっぱり、私は消太くんが好きだ。
消太くんがこうして笑ってくれるのなら何でもできる気がしてくる。
「今からやる!?」
「馬鹿言え、お前もう風呂入ったんだろ?
また今後な。俺ももう上がる。」
そうだった。
もう遅い時間だった。
少し残念だが、どうせやるなら心操くんの前でやってあげよう。
その方が合理的だもんね。
私の楽しみも増えた。
「何ニヤニヤしてんだ。戻るぞ。」
ザッザッと歩いて行く消太くんを慌てて追いかけた。