第29章 心配のその先
耳を澄ますと少し離れたところから
シュルルルル……と音がする。
何の音だろう。
ちょっと神経を尖らせつつ音のする方へ向かう。
シュバッといきなり後ろから身体を掴まれて
テコの原理で木に吊るされた。
急な出来事でギャア~!!と叫んだが、
よく見るとこれ捕縛布だ。
「何やってんだ、お前。」
「消太くん!?」
「こんなに時間に一人で出歩くなよ。」
「消太くんを探しに来たの!
何やってるの、こんな時間に!」
シュルシュルと私を木から降ろし、捕縛布から解放してくれる。
「トレーニングだよ。
たまには身体動かさないと、鈍るだろうが。
この時間からしかできないからな。」
こんな時間にトレーニングしていたのか。
昼間は学校あるし、仕事もあるし、確かに消太くんの空いてる時間ってこのくらいしかないのか……。
「……で?何か用か?」
「あ、あの……。
最近、ほら消太くん忙しそうだし、疲れてそうだし、何か私にできることないかなぁ〜って……。」
わざわざ探しに来て、トレーニングの邪魔をしてまで何を言ってるんだろうか……。
ちょっと恥ずかしくなってきた……。
消太くんは木に寄りかかり、少し驚いたような顔をしていた。