第28章 不器用な人
ブラックコーヒーを3つ、さらに私とミッドナイトはエッグタルトも注文した。
「霞ちゃん、腕擦りむいてるじゃない。」
「あ、この前消太くんと手合わせした時のです。」
「手合わせって……。
相変わらず色気ねぇな、お前ら2人。」
ひざしくんは呆れた……という顔でこっちを見た。
返す言葉もない。
私は無言でコーヒーに口を付けた。
「そういえば、例の社長さんとはどうなったの?」
「食事に行った時にお断りしました!
私の気持ちはやっぱり変わらないので。」
「もったいねーの。」
そんなことを言いながら
ひざしくんは何処となく嬉しそう。
「霞が馬合さんとディナーに出掛けている時の相澤の醜態を見せてやりたかったぜ〜。」
「そうそう、かなり酔ってたわよね。
霞、霞ってうるさいのなんのって。」
……あの喧嘩した後、飲んでたんだ。
だから帰って来た時に談話室のソファーで寝てたのね。
「あいつは、不器用すぎるんだよなァ。
もっと気楽にやればいいのによ〜。」
「そこが消太くんの良いところなんだよ。」
私がコーヒーに口をつけて微笑むと
ひざしくんとミッドナイトが呆れたという顔をしていた。
「霞はほんと、朧にそっくりだよ。」
「えー、どの辺が?」
「相澤を信じてやまない所が、だよ。」
ひざしくんがヘラッと笑って、ミッドナイトも微笑んでいる。
あの能天気だった兄に似てると言われるのはちょっとだけ心外だが、そうゆう所は似てると言われて嬉しいもんだった。
ごめんね、お兄ちゃん!
私も笑顔を返して、エッグタルトを口に放り込んだ。