第28章 不器用な人
15分ほど経っただろうか、
お互い息を切らしながら間合いを取る。
消太くんが戦闘体制を解く。
終了の合図だ。
私はその場に座り込んだ。
「あ〜、中々一撃が入らない!
やっぱりハンデもらえばよかった。」
「ハンデいらないだろ。
最後の方は本気で避けちまったよ。」
「いや〜、私もまだまだだな。
次は一撃いれる!また相手してよ。」
「望むところだ。」
ハァハァと呼吸と整えながら
木の影から覗いてた人物に声をかけた。
「どうだったー?心操くん。」
「気付かれてましたか……。」
後ろ首に手をかけながら
心操くんが近付いてきた。
「遅れてすみません。」
「いや、いいよ。
俺たちも暇つぶしてたから。」
「たまにはガッツリ組手しないと身体が鈍るもんね!楽しかった〜!」
「動画回しておけば良かったです。
後で見直せば参考になりそう。」
ああ、なるほどな。と消太くんが考え込む。
動画に納められるのもなんか恥ずかしい気もするが……。
「今度、捕縛布アリでやるか。
見取り稽古になるかもしれん。」
「そうか〜、いつも消太くんと心操くんでやってるから、じっくり見てられないもんね。
よし、私も個性アリなら受けて立ちましょう!」
「ありがとうございます!」
心操くんは目が輝いていた。
本当にこの子はストイックというか、何というか。
目標に向かってひたむきに努力を惜しまない子だ。
捕縛布の使い方も段々と消太くんに近付いてきているし、スタートラインも近いかな?
「それじゃ、始めますか。」
今日も日が暮れるまで
可愛い生徒の訓練に付き合う。