第28章 不器用な人
放課後、心操くんと消太くんとの待合せ場所の訓練場に来ていた。
二人はまだ来ていなかったので、軽くストレッチをして待っていた。
ザッザッと歩く音が聞こえて振り返ると消太くんがのそのそと歩いてくるのが見えた。
心操くんは一緒ではない。
「あれ?一人?」
「HRが長引いたらしい。
もう少ししたら来るだろ。」
なるほど……と返事を返しながら、名案が浮かんだ。
「消太くん、手合わせしようよ。
ボーッと待ってるより合理的でしょ?」
ニヤッと笑って挑発する。
私はストレッチも済ませたので準備万端だ。
「別にいいぞ。暇だしな。」
消太くんもニヤッと笑って首をコキコキ鳴らす。
消太くんと取っ組み合うのは初めてだ。
「捕縛布ナシの体術勝負ね!」
「OK。そんじゃま、いつでもどうぞ。」
よーし!と気合いを入れて
地面を蹴り出し消太くんとの間合いを詰める。
右でフェイントを入れつつ、
左手の拳を繰り出すも軽くいなされ
ヤァァ!と声を出し飛び蹴りをすると片手で受け止められた。
そのまま身体を捻って地面に手をつき、回し蹴りの体勢に入るも消太くんがヒュッと上体を低くし蹴りをかわしつつ、低い体勢のまま私の腹部めがけて蹴りを繰り出した。
私は体勢を崩しつつも腕で受け止め、後ろに飛んで威力を殺す。
威力は殺したものの、受け止めた腕がジンジンと痛む。
やはり体格の差か、蹴りの重みが違う。
今度は消太くんが間合いを詰めてきて、必死に攻撃を受け流す。