第27章 仲直りと夜の空
「私ね、例の社長さんにきちんとお断りしてきたよ。」
霞はまた空を見上げている。
真っ直ぐに。
「後悔しないように、生きていくつもりなの。
お兄ちゃんにも言われてたから。後悔すんなって。
だからね、今はヒーローとして教師として消太くんを支えていけたらって、思ってる。
それが、私の後悔しない生き方なの。
私は……高校の時から変わらず、消太くんが……好きだから。」
昔から思っていた。
なんでコイツら兄妹はそんなに俺の事ばかり構うのだろうと。
ほんと似た物兄妹だよ、お前ら。
霞の話を聞きながら
「ショータ!」と笑いながらいつも俺を引っ張ってくれていた今は亡き笑い顔を思い出す。
「……俺は……「いいの!」
俺の言葉を遮って霞が叫ぶ。
「どうこうなりたいとか思ってないの!
お互い忙しいし、それどころじゃないのもわかってるし。ただ、私の気持ちは消太くんにある……から……他の人と幸せになれ、なんて……もう言わないで欲しいだけなの!」
空を見上げていた霞は、いつの間にか真剣な表情でこちらを見ていた。
凛としていて力強い目だった。
……綺麗だな。
俺もお前が好きだ。と素直に言えたらどんなにいいか。
過去と向き合えず、何でも一人でなんとかできるように生きてきた俺にとって霞は大切すぎた。
もう失いたくないんだ。
俺では霞を幸せにできる自信がない。
「……わかった。もう言わない。
でも俺にとってお前は大事な妹分だ。
それ以上でも、それ以下でもない。」
俺は、こうしてまた自分に嘘をつく。
霞はわかってると言わんばかりに、少し悲しそうに微笑んだ。
ズルい男で、ごめんな。