第2章 雨と雲
「あ、そのゴーグル…
お兄ちゃんのとお揃い?
そういえばひざしくんも付けてるね」
香山先輩とお兄ちゃん達が
ゴーグルを付け合ってジャレあっている。
「ああ、インターンで煙を出す個性の敵とやり合って目を保護する為にって白雲が貸してくれて…。
個性との兼ね合いもあって俺も付けることにしたんだ。
山田は完全に便乗しているだけ。」
「ふふっ、お兄ちゃんのゴーグルね
入学祝いに私があげたんだよ〜!」
「へぇ、知らなかった。」
消太くんが驚いた顔をしていた。
個性の雲で移動する際に目を保護できるようにゴーグルを贈った。
渡した時は大事にするな!って喜んでくれていたっけ。
「そーいえば『4人事務所』って何?」
「ああ、白雲が卒業後は3人で事務所作って独立しようってさ。」
なるほど、そこに香山先輩も入ってもらいたくて
お兄ちゃんが勝手に4人に増やしたってわけね。
「へぇ〜!でもいいの?
その事務所、消太くんが苦労しそう」
「…だよな。でも、悪くないなって思ってる。
俺、卒業後のこととか将来のこと全然想像できなかったから。
霞は?卒業後のこと考えてる?」
「何にも。体育祭も指名なかったし…。
私も消太くん達の事務所でお世話になろうかなぁ、サイドキックとして!」
「ははっ、それいいな。
俺の仕事が減りそうだ。」
私と消太くんは見つめ合って笑い合う。
ビュウと強い風が二人の間を吹き抜けた。
消太くんはゴーグルをかけ空を見上げている。
私も空へと視線を向ける。
風に吹かれた雲がすごい速さで流れていくのをしばらく見つめていた。