第25章 強敵
エスコート役も決まった。
ドレスも指定されたものがあるし、メイクと髪の毛は適当に自分でやれば良い。
あとはパーティー当日を乗り越えるだけだ。
溜め息をつきながら廊下を歩いていると、後ろから声がかかった。
「こんなとこで何やってんだ?」
「あ、消太くん。」
お風呂上がりだろうか、肩まで伸びた長い髪が少し湿っていた。
「ちょっとひざしくんに用事があったの。
これから部屋に戻るところだよ。」
「用事?」
「今度、パーティーにお呼ばれしたの。だからエスコート役をお願いしたんだ〜。」
予想通り、物凄い嫌そうな顔をして「そんなの出るやつの気がしれん」と呟いた。
消太くんがキチンとセットしてパーティーの装いをしたらかっこいいんだろうな〜なんて想像していると、エレベーターの前に着いた。
「それじゃ、おやすみ。」
「パーティーで変な男に絡まれるなよ。」
はーい。と返事をすると
返事は短く。と注意された。
まるで子供扱い。
一個しか変わらないのに……。
ムスッと消太くんを見つめると、ワシャワシャと乱暴に頭を撫でられ、口元だけクスッと笑って優しい声で呟いた。
「おやすみ。」