第24章 文化祭
A組の催し物は無事に終了した。
結果として大成功だったようだ。
見に来ている人たちはみんな楽しそうに盛り上がっていた。
霞は休憩時間になると飛んできた。
文字通り、雲で。
マイクからA組もB組も大盛況だったと聞かされたらしく、何で知っているのか不思議そうにしていたので事実を伝えた。
そこからずっとムスッとしている。
「俺は注意したぞ。
パトロール行けよって。」
「私だって観たかったのに!
すっごくすっごく観たかったのに!!」
エリちゃんは緑谷と通形と手を繋ぎ、歩いている。
その少し後ろで蛙吹と麗日が前の3人を微笑ましく見守っている。
その更に後ろでは霞が怒っていることに気づいていない。
おそらく前の5人がこちらを振り向いたら怖い顔をしている霞にビックリするだろう。
エリちゃんを怖がらせるわけにはいかないので早急に機嫌を取らないといけない。
マイクのせいなのに、なんで俺が……。
「クレープ買ってやるから機嫌直せ。」
「え!?いいの?やったぁ!」
単純で助かった。
クレープ、クレープ!とルンルンと歩いている。
そんな姿が可愛くて俺も笑みが溢れる。
「高校時代が懐かしいね!
クレープ、ご褒美でもらったよね。」
「……そうだったな。」
高校時代を思い出すのはまだ辛い。
良い思い出は少ない。
白雲が死んでからはがむしゃらに自分を鍛え、それ以外は寝ていた記憶しかない。
数少ない良い思い出にはいつも霞がいる。
霞はあの頃から変わらずに俺の隣で笑ってくれている。
願わくば、ずっと隣で笑っていてほしい。
でもまだ俺にそれを伝える勇気は、ない。
「エリちゃーん!
消太くんがクレープ奢ってくれるって!」
すっかり機嫌を直した霞はエリちゃん達の方へ走っていく。
お互い立場は違えど、こうしてまた一緒に文化祭を楽しめて……よかった。
俺は前を歩く6人をぼんやり見つめながら背中を追いかけた。