第23章 林檎と猫
その後、八百万さんに紅茶を淹れてもらって少しみんなと談笑した後、緑谷くんが戻ってきて練習を再開するようなので私はエリちゃんと通形くんがいる食堂へ向かった。
「エリちゃーん、通形くん!」
「霞先生!」
「エリちゃん、疲れてない?大丈夫?」
「……うん。」
よかった!と笑ってエリちゃんの隣に腰掛ける。
消太くんはまだ戻ってきてないようだった。
「通形〜!」
「おー、やっほー!
すみません、霞先生。
ちょっと行ってきていいですか?」
「もちろん。
エリちゃん、一緒に待ってよう?」
「……うん。」
通形くんが席を離れ、同級生の元へ向かった。
「みんな、準備頑張ってたでしょう?
楽しみだよね〜、文化祭!」
コクン。とエリちゃんも頷いてくれた。
「消太くん、遅いね〜。何してるんだろ。」
「……しょうたくん?」
あ、消太くんじゃ伝わらないか。
相澤先生のことだよ〜!と返した。
「あいざわせんせいってどんな人?
……いつも来てくれるけど、あんまり話した事なくて。でも助けてくれた人だから、もっと知りたいって思うの。」
「消太くんはね〜、
見た目があんなだから怖く見えるけど、すーーっごく優しい人なんだよ?
エリちゃんにとって、ルミリオンとデクはヒーローでしょう?
それと同じでね、消太くんは私にとってのヒーローなの。」
「わたしにとっての、ルミリオンさんとデクさんみたいな人……。」
「そうそう。私の自慢のヒーローなの。」
「何の話をしてんだ、お前は。」
ニュッと消太くんが私の顔のすぐ横に現れた。
ギャッ!!!と驚くと隣にいたエリちゃんもビクッとした。
「ご、ごめん。エリちゃん!
消太くん、脅かさないでよ!!!」
「エリちゃん、そろそろ病院に戻ろうか。」
消太くんがエリちゃんに声をかけ、エリちゃんは頷いて椅子から降りる。
通形くんも戻ってきた。
帰りは消太くんだけで送ってくるらしい。
通形くんと私は校門でエリちゃんを見送った。
「エリちゃん、文化祭の当日は俺とデートだからね!」
「うん。
みつげつなだんじょのコウラク。」
「エリちゃん、難しい言葉知ってるのね。」
「通形だろ、何ちゅう事教えてんだ…」