第23章 林檎と猫
「よかった!じゃあコレ、お友達の証ね!
通形く……ルミリオンからリンゴが好きって聞いたから
リンゴネコちゃんのキーホルダー!
私もお揃いで買っちゃった!」
黒猫がリンゴの被り物をしたぬいぐるみのキーホルダーをエリちゃんにひとつ手渡し、もうひとつは自分の手に持ってぷらぷらと揺らした。
エリちゃんは手のひらに乗せたリンゴネコを見つめてから、私の方をみてポツリとありがとう…と言ってくれた。
私はにっこりと笑顔を返す。
エリちゃんが私の顔をジッと見つめてきたので、どうかした?と聞いてみた。
「あのね…デクさんとルミリオンさんがね……、
みんな私の笑った顔が見たいんだよって言ってたの。
でもね……笑うって……どうしたらいいか、わからなくて。
どうしたら、霞ちゃんみたいに……笑える?」
エリちゃんは笑い方を知らない。
消太くんから事情は聞いていた。
笑い方を知らないエリちゃんのために楽しいことを教えてあげたい、と緑谷くんが文化祭に招待することを提案したのだ。
私はエリちゃんに少し近づき、目線を合わせた。
「エリちゃん。頑張って笑おうとする必要ないの。
エリちゃんが心から楽しいって思った時に身体が勝手に笑っちゃうんだよ。
だから、焦らなくて大丈夫だよ。
これからウーンとたくさん、笑っちゃう出来事が起こるから、その時にたくさん笑えばいいの。」
うん……。と俯くエリちゃんの頭を撫で、
明日学校で待ってるね!とまた笑いかけた。
「すみません、そろそろお時間です。」
看護師さんが声をかけてきたので
私と消太くんは病室を後にした。
「明日、外出の許可をいただいているので午後迎えに来ます。よろしくお願いします。」
消太くんが看護師さんに頭を下げた。
私も一緒に頭を下げた。