第23章 林檎と猫
何着か私の好みで購入して、あとは本人なり、看護師さんになり選んで着てもらえば良い。
けっこうな荷物になってしまったが、消太くんは当たり前のように荷物を持ってくれた。
長い買い物をしても文句一ついわず、疲れてきたなと思ったらスマートにカフェに入るよう促された。
…………なんか、慣れてない?
「天然のタラシだと思ってたけど、そうでもない……のか?」
「あ?タワシ?」
しまった、声に出てしまった。
私は慌てて何でもない!と言ってアイスコーヒーに口を付ける。
「消太くんって……今彼女とかいないの?」
「一緒に教師寮に住んでるんだからそんな暇ないのわかるだろうが。
そもそも恋愛自体が合理的じゃない。」
「……そっか。」
喜んでいいものか、悪いものか…。
恋愛は合理的じゃない、か。
私は消太くんに勝手に片想いしているだけで、付き合いたいとか思っているわけじゃないけど、その可能性すらないのは少し寂しい。
でも消太くんに恋愛する気がないなら、妹分として一番近くに居られるかも…なんてズルい考えも浮かんでくる。
複雑な心境だ。
「そろそろ行こうか!
面会時間に間に合わなくなっちゃう!」
そうだな。と消太くんが立ち上がり伝票を持つ。
自分の分を払おうと財布を出すと、付き合わせたお礼だからいい。と言って会計を済ませてくれた。
奢り方までスマートだ。
「やっぱり慣れてる。」
「何がだよ。」
行くぞ。と消太くんは荷物を両手に持ちズンズンと出口に向かって歩いて行く。
私は置いていかれないように、後ろをついていった。