第22章 できる事
教員寮に戻ると
消太くんは外のベンチに座っていた。
私も無言で隣に腰掛けた。
「……俺もまだまだだな。」
消太くんは天を仰いだ。
私はも同じように空を見上げる。
「心操くんと一緒に鍛えてあげようか?」
「返り討ちにしてやるよ。」
消太くんは天を仰いだまま、目だけでこちらをギロッと睨んだ。こっわ。
「幹部の一人に捕まって、殺されてもおかしくなかった。
緑谷のこと見ておくって言ったのに、あのザマだ。」
「それでも、見ててくれたから生徒たちは無事に帰ってこれたんじゃない。
イレイザーヘッドってかっこいいのよ?
私、ファンなんだから。昔から。
イレイザーヘッドは私を置いていかないって、信じてたよ?」
消太くんを見て微笑んだ。
消太くんも軽く微笑んでくれた。
「……捕まってた時、死ぬかもって思った時にお前の顔が浮かんだんだ。
絶対死ねないって。霞を悲しませてたまるかって。
……またお前の笑った顔が見れてよかった。」
心がジワァ〜ッと暖かくなる感覚。
私が消太くんの生きる理由になれていたのなら、そんな嬉しいことはない。
精神的にも肉体的にも辛い事件だっただろう。
でもプロヒーローとして、教師として、気を張っていないといけない。
落ち込んでいる暇はない。
そんな消太くんを助けたい。
消太くんが望むならずっと笑っている。
「さ、そろそろ中入ろう!
ハーブティーでもいれようか!
前に八百万さんにもらったのがあるの。
心が落ち着くようなやつ。」
「……ビール飲みたい」
「それはダメ。」
駄々をこねる消太くんの手を引き、寮の中へと戻った。