第21章 こころの壁
ひざしくんは私の向かいに腰掛け、肘をついて私が食べるのを見守ってくれている。
落としたい女が風邪を引いたときにここぞとばかりに作るんだと、聞いてもいない情報を教えてくれた。
「これは落ちるね!」
「そらもう、百発百中よ!
オレのばーちゃん直伝ジャパニーズリゾット。」
あっという間に平らげ、
ひざしくんが後片付けまでしてくれたので、せめてコーヒーだけでも淹れさせてくれと頼んで自分の分とひざしくんの分のコーヒーを淹れた。
「過呼吸、起こしたって?」
「そうなの。
まだ、引きずってるみたい。
お兄ちゃんのこと。」
嫌になる……と自嘲した。
「お前が引きずっててやらないと、朧が拗ねちまうだろ?」
「……ふふっ、そうかも。」
「アイツ、重度のシスコンだったもんな〜。
……霞を教師に推薦したの、オレだったろ?
人が足りなくて、霞が教師に向いてるからってのももちろんあるんだが……本当は相澤のためでさ。」
「……消太くんのため?」
「アイツも未だに引きずってんのよ。
心のどこかで。オレには話さないけどな。
プロになってから霞と会わなくなったのも、会わせる顔がないって言ってた。
……酒飲むとたまに弱音吐くんだよ。
霞、霞ってうるさくて。
会えないっつうなら、会わざるを得ない環境にしてやろ〜って。マイフレンドのために一肌脱いだってわけ。」