第21章 こころの壁
今日は消太くんが例の会議に呼ばれていて不在。
放課後の心操くんの特訓は対人格闘技。
まずは受け身から!と私は心操くんを容赦なく投げ飛ばす。
「いっててて……。」
「受け身、甘いよ!
戦いの最中、痛くて動けませんじゃ死ぬよ!
受け身は基本!しっかりやっていこう!!」
ずっと受け身だけやらせるのは本人も面白くない。
だから、投げ技と受け身は交互におこなう。
今日は投げ飛ばしてから、相手を押さえつけて動きを止める練習を繰り返す。
「この前、取り押さえた暴漢がね。
手のひらから空気砲を放つ個性だったの。
その時、生徒たちにこの押さえつけ方教えなきゃ!って思ったんだよね。」
そう言って心操くんの腕をグッと抑え、
手のひらを心操くんの方へ向ける。
「いててててて!!
実戦中に考え事なんて、余裕、ですね!!」
心操くんを押さえ付ける手を緩め、身体を解放した。
ひねあげられた関節をさすっている。
「発動条件のある個性だったら、それをさせない。
それがまず基本ね。」
「頭でわかってても難しいです……」
「咄嗟の判断は経験がものをいう。
でも身体の反応は反復練習あるのみ、だよ!
よし、次は心操くんがやってみてね!」
何回か投げ、投げられを繰り返すうちに
すっかり辺りは薄暗くなってきていた。
私も心操くんも泥だらけだ。
「やってるね。お二人さん。」
校舎の方から消太くんが歩いてきた。
「消太くん!お疲れ様!」
私はパッと立ち上がり泥をパンパンと叩いた。
心操くんも同じようにしている。
「悪いな、心操。
しばらくあまり時間が取れないかもしれん。」
「いえ、大丈夫です。
出来ることは自分で練習しますし。
……毎日、霞先生の体術訓練なのはきついけど。」
ボソッと心操くんが文句を言ってきたので
なんだとー!!と隙をみて投げ飛ばすと
心操くんはしっかり受け身を取った。
うん、成長している。
ククッと消太くんが笑った。
「なるべく顔出すようにするから。心操のためにも。」
「あ!消太くんまで!!!」
もう!と頬を膨らませると、
もう一度、消太くんはククッと笑った。