第20章 手探り
「まさかファットに会えるなんて~!」
「ほんまやな!
ちょっと俺の事務所寄っていき、
面白いもん見られるで!」
ファットガムが取り込んだ先ほどの暴れた男は
ついに薬が切れたようで完全に大人しくなり、
警察へ連行されて行った。
何でも、個性をブーストさせる薬を密売していたそうだ。
警察官に追われ、焦って薬を使用したらしい。
本来は指先からそよ風が出る個性らしいが
ブーストさせると空気砲として大人を吹き飛ばすくらいの威力になってしまうらしい。
私が活動していた過疎化地域では見ることのなかった薬。
こういう類の薬は昔から出回っている、とファットガムが言っていた。
ファットガムが一緒に夕飯に行こうというので、ファットガムの事務所まで歩いている。
ファットの事務所とマグネの元勤務先がこんなに近いとは思っていなかった。
ファットに協力してもらえば、マグネの動きが掴めるかもしれない。
なんて考え事している間にファットガムの事務所へ着いた。
「ただいま~。
いや~、待たせちゃってすまんな!」
ファットガムが事務所にいた人物に声をかけたが
私の視界は大きなファットガムによって遮られている。
「いえ!大丈夫っす!」
……あれ?
なんだかすごく聞き覚えのある声……。
スススと横に移動し、
ファットガムの向こう側を覗き込む。