第20章 手探り
ヒーロー服では目立ってしまうので
ホテルを探して着替えようと思い、駅前の大通りに出た。
駅の付近にはビジネスホテルがたくさんある。
当日でも空いているところはあるだろう。
目に付いたホテルに向かって歩くと
路地裏から男の人が飛び出してきて私とぶつかった。
その拍子に男の人が持っていたアタッシュケースが転がり、中身が散乱した。
「ごめんなさい、お怪我はないですか!?」
ぶつかった男の人に声をかけると
何やら興奮した様子で息が荒い。
私が辺りに散乱したアタッシュケースの中身を拾い集めようとすると、突然怒鳴り出した。
「触んなや!!!!」
それは俺のもんやァ!!!と慌てて中身をかき集めている。
転がっている中身に目をやると、液体の入った注射器にみえる。
なんか、怪しいなこの人。
中身は注射器……危ない薬だったら逃がすのはまずい。
そしてここは大通り、通行人が多い。
下手に刺激して暴れられるのは良くない。
さて、どうしたものか……。
男は、触るなァ!と叫びながらまだ中身を集めていた。
「そうだ、お兄さん。
あの路地裏の方に一つ転がっていきましたよ?」
男が飛び出してきた路地裏を指さし、
一旦、大通りから移動させようと男に声をかけた。
なるべく刺激しないように。
予想通り、男は裏路地へ走る。
路地裏へ入ったら職質かけてみよう。
そう思って男の後を追った。
すると、路地裏から警察官が数名走ってきて
興奮状態の男に拳銃を向けた。
え!?ちょっと何やってるの!?
すぐそこ大通りなのに!!!