第15章 取り戻せ、日常
皆さんの前で消太くんに抱きつき泣き喚いた私はまだ恥ずかしさが抜けず、一番最後に校長室をでた。
出てすぐの廊下で消太くんとオールマイトが待っていた。
「……よし、相澤くん。」
「さっそく行きますか。」
「………………え?」
状況が読み込めていないまま、背中を押されて歩き出した。
「「「 乾杯 」」」
まあまあまあ、と連れられて来たのはお馴染みの三猿。
雄英に赴任してから
割とお世話になっている居酒屋さん。
ひざしくんやミッドナイトと来るうちにすっかり大将とも顔馴染みで最近は「いつもの!」の一声で私専用のビールとおつまみセットが運ばれてくるようになってきたところだ。
私は消太くんの隣に座り、オールマイトは机を挟んで私の向かいに腰かけた。
消太くんもオールマイトも何も食べないとのことなので、私は大将に「いつもの!」と注文をした。
「家庭訪問、お疲れ様でした!」
「霞くんのお陰でスムーズに済んだからね。
相澤くんと一杯奢らないと!って話になったんだよ。」
オールマイトがニコニコと事情を説明してくれた。
「そんな、こちらこそですよ…。
本来なら副担任の私が頭を下げて回らないと行けなかったのに……。」
「ああ、いいのいいの。
私が校長に頼んだんだよ。
家庭訪問行かせてほしいって。」
そうだったのか、
事実上の戦力外通告かと思って実はヒヤヒヤしていた。
消太くんは会話に参加せず、
一人手酌でゴクゴクとビールを飲んでいる。
もう酒は飲まない!と宣言していたのにいつの間にか無効になったようだ。
オールマイトは飲めないらしく、ノンアルコールビールを飲んでいた。
「相澤くん、お酒好きなの?」
「普通です。」
オールマイトはこれを機に消太くんと仲良くなろうと頑張っているようだが、暖簾に腕押し。
消太くんももう少し社交性を持ったらいいのに。
けっきょくほとんど私とオールマイトが会話をしていた。