第13章 襲来
「あんまり気に病むなよ?
お前が悪いんじゃない。
悪いのは、敵だ。」
それはそうだ。悪いのは敵。
でもいつだって理不尽な事をしでかすのが敵で、その理不尽をなんとかするのがヒーローの仕事だ。
「私を……あんまり甘やかさないで……ひざしくん。
なんだかどんどん弱くなっていく気になるよ。」
ハハハ……と笑ってみたが、目が潤んでいく。
私に泣く権利なんてない。
グッと堪える。
消太くんやブラド先生の方がよっぽど辛い。
大事な仲間が行方不明になっているプッシーキャッツの皆さんの方がよっぽど辛いんだ。
「アーン?馬鹿言え!
霞を甘やかすのが俺の仕事なんだよ!
俺のアイデンティティ奪うんじゃねーよ!」
一瞬ポカンとして、ひざしくんを見ると
これでもかってくらい踏ん反り返り、ドヤ顔をしていた。
フフッと自然に笑みが溢れた。
「……何それ」
「弱気になったら相澤んとこ行けよ。
お前に喝入れんのがアイツの仕事。
アメとムチってやつだよ!」
「ふふ、レモンキャンディだな〜。
消太くんはサルミアッキ。」
「不味いよな、あれ。
相澤はパクパク食べてたけど。」
「やっぱり消太くんは舌おかしいんだね…」
ひざしくんのおかげで
少し気持ちが前向きになった。
私は私に出来る事を。
今は記者会見でしっかりと説明責任を果たす事を考えないと。
「ひざしくん、ありがとう。」
「おう。」
ひざしくんはニカッと笑ってくれた。
私は昔から大好きな兄貴分に助けられている。
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ひざしくんと別れてから
服をキャリーケースから引っ張り出しシャワーを浴びに行った。
汚れた身体を洗い流し、少しさっぱりした気分で仮眠室へ向かう。
私が使う予定の仮眠室の前に見覚えのある寝袋が膨らんで転がっている。
「消太くん……。
寝るならせめて仮眠室の中にしなよ……。」
「……ああ、悪い。
お前に用があって待ってた。」
寝袋に入ったまま、モゴモゴと話している。
「どうしたの?」
「記者会見までに少し髪を整えてくれないか……?
このままだと、あれだろ?」
「あー…そうだね、あれだね。
わかった。明日でもいい?」
「ああ、頼む。」