第10章 導く人
心操くんと近くにあったベンチに腰掛ける。
ゴミ捨て場の近くなので
あまり人も近づかない穴場だ。
「体育祭、惜しかったね。」
「いえ……全然……」
「個性、洗脳なんだってね。
凄い個性だね。」
「……こんな個性。
何の役にも立ちませんよ……。
ヒーロー科の試験にも受からなかったし。
体育祭でも個性を使っていない緑谷に、負けたし。」
「私の高校の先輩ね、
心操くんと似たような個性だったの。
直接攻撃に活かせないような。
いつもこんな個性って言って下向いてた。」
心操くんは下を向いたままだ。
「でもね、私は凄い個性だと思ってた。
出会った時から。
心操くんの個性も凄い個性だと思う。
とってもヒーロー向きの個性。」
「……よく敵向きだって言われるんですけど。」
心操くんはボソッと声を発した。
「まあ、確かに敵にいたら厄介ね。
でも裏を返せばヒーローだったら
敵さんからしたらかなり厄介でしょう?
それってつまりヒーロー向きの個性ってことだよ!」
心操くんは驚いたようにこちらを見ていた。
「私の高校の先輩はね、
自分の個性をよく理解してた。
誂え向きの個性じゃないから。
その個性でも強くなれるように戦えるように凄く努力してたの。
私の個性はね、この雲なんだけど…」
ポンッと小さな雲を一つ出した。
「これだけ。
移動には便利だけど、とても戦えるような強い個性じゃないの。
その先輩と少し自分を重ねてね。
その人が頑張ってるから私も強くなろうって思えたんだ。
だからね、その人は私のヒーローであり、原点なんだ。」
「原点……」
「そう。心操くん。
酷い言い方かもしれないけれど、
個性を憎んでも、人を羨んでも強くはなれないよ。
大事なのは自分の個性をどう活かすか、その為にはどうするのか考える事だと思うの。」