第10章 導く人
今日は職場体験の希望先の提出日。
あの後もA組B組の生徒たち何人かの相談に乗り、アドバイスをした。
A組は全員希望先を提出したようで
消太くんがプリントをトントンと揃えている。
「いろいろ相談のってやってくれたんだってな。助かったよ。」
「ちょっとアドバイスしただけだよ。
私の経験が役に立ったなら嬉しいけど…」
「後はあいつらが経験をどう活かすかだ。」
「きっとみんな強くなって帰ってくるよ!」
職場体験はインターンよりは危険が少ない。
ヒーローという職業において絶対はないが、そこまで不安はない。
兄の件もあってインターンは少し怖い。
可愛い生徒たちを送り出すのはやはり不安もある。
でもまだ子供だと囲ってばかりでは成長できないとも思う。
私も少しずつ成長して行かないと……。
「……不安か?」
表情に出ていたのだろうか、
消太くんが心配そうに私を覗き込んできた。
私が心配かけてどうする。
しっかりしなきゃ。
深呼吸をして心を落ち着かせる。
「ううん、自慢の生徒たちだもん。
信じてるよ。」
「そうか……無理するなよ?」
そう言って私の頬を
消太くんが手の甲でなぞり
何知らぬ顔でプリントに視線を戻した。
ボッ!!!!
頭から火が出たように顔が熱い。
「わ、わた、わたわた、私!」
ゴミ捨て行ってきまーーす!!!
と叫んで職員室を飛び出した。
「……あれであの二人付き合ってないんですよね。」
「そうなの。焦ったいわよね〜」
「……隣のブラドが可哀想だぜ。
ゴシューーショーサマー。」
セメントス先生とミッドナイトとひざしくんがコソコソと話していたのは私の耳には入らなかった。