第8章 励め青春
(……似てる。)
高校時代の消太くんに。
いや、消太くんはヒーローを目指して
ヒーロー科に入学できている。
彼は消太くんよりもチャンスを
もらえていない立場だ。
雄英のヒーロー科入試試験は仮想敵との戦闘。
心操くんの個性どころか、
当時の私だって受からなかっただろう。
私の頃は今ほど倍率が高くなかったから
個人個人の個性を把握した上での試験だった。
つまり今の雄英の入試は
心操くんのような個性では
戦い方を覚えない限り
ヒーローへの道は閉ざされてしまう。
心操くんの叫びが心に重くのしかかる。
きっと、お兄ちゃんなら……
そして……消太くんなら
(よし。決めた。)
私は心の中である覚悟を決めた。
そしてそのまま順調に試合は進む。
轟くんに凍らされた瀬呂くん
放電ブッパでキャパオーバーしウェイ化している上鳴くん
お腹を壊した上にアッパーを食らった青山くん
真っ向勝負の殴り合いで引き分けとなった切島くんと鉄哲くん
爆豪くん相手に奮闘した麗日さん
それぞれを個性の雲に乗せ
リカバリーガールの元へ運んだ。
少し休憩を挟んでから2回戦。
やはりここからはレベルがグッと上がる。
緑谷くんと轟くんの試合は
どの試合よりも鬼気迫るものがあった。
特に緑谷くんは怪我お構いなしだ。
セメントス先生も止めますか?と
主審のミッドナイトに確認している。
でも個性の制御、でき始めている。
多分、彼は今の自分でできる最大限の力で本気で勝とうと戦っている。
「期待に応えたいんだ…
笑って応えられるような…
カッコいいヒーローに、なりたいんだ!」
ああ、この子は本当に
心の底からオールマイトを尊敬しているんだ。
凄い事だ。
まだ一年生なのに立派なヒーローの卵だ。
そして轟くんが左側の炎を使った。
「ミッドナイト!!」
セメントス先生が食い止めようと
コンクリートの壁を出す。
試合に見惚れてた私は
一歩も動けず、その後起こった爆風に吹っ飛ばされた。
……やっぱり椅子作ってもらえばよかった。
咄嗟に雲を出してクッション代わりにして
壁への激突を防いだ。
結果は緑谷くんが戦闘不能。
轟くんが3回戦に進出した。