第1章 case*1 リヴァイ·アッカーマン
いつも通り帰宅するとドアノブに紙袋が掛けられある。
最初に掛けられてから丁度一月が経過していた。
は恐る恐る袋の中身を確認する。
の好んで飲むお酒が二本と、一枚の紙が入っていた。
"見守っているよ"
は息を飲んだ。
周囲を見渡すも怪しい人影は見当たらない。
(……どうしよう)
家に入りお酒をシンクに流しゴミはゴミ箱に捨てた。
ベッドに入り布団を頭から被りそのまま眠りについた。
仕事は待ってはくれない。
やっとの事で一日を終え、すっかり心安らぐ事が出来なくなった家に帰る。
紙袋は掛けられていない。
ホッと一息つき鍵穴に鍵を差し込みドアノブに右手を掛けた。
ニチャっと音をたて粘着性のある液体が指を濡らす。
白濁するそれには堪らず悲鳴を上げた。
悲鳴を聞きつけたリヴァイが扉を開けた。
305号室の前で左手で右腕を握りしめ、呆然と右手を眺めるの異様な姿が目に映る。
「…おい」
リヴァイが声をかけ近づいた。
「おい…何が…」
リヴァイはの右手に付着している液体に気付き眉間にシワを寄せた。
右腕を握りしめる左手を外し、の手を引き家の中に連れ込んだ。
リヴァイはを洗面室まで連れて行き手を洗い流した。
しつこいくらいにハンドソープで洗い、アルコール除菌スプレーを吹き掛け、アルコール除菌のウエットティッシュで拭き上げた。
をソファーに座らせる。
二重に重ねたビニール袋にティッシュペーパーにアルコール除菌スプレーとアルコール除菌のウエットティッシュを持ち外へ出た。
305号室のドアノブから菌という菌を滅菌させ、差さったままの鍵を施錠した。
家に戻るとキッチンから水音が聞こえ、が食器用洗剤で手をゴシゴシと洗っていた。
リヴァイはの手を制し泡を落とし水気を拭き取った。
「大丈夫だ、汚れていない」
の右手に唇を押し当てた。
はポロポロと涙を流した。
「何があった」
が答える事はなかった。
ひとしきり泣き落ち着くとリヴァイにお礼を伝え部屋を出る。
立ち去るを追うリヴァイの瞳は紅く光っていた。