第1章 case*1 リヴァイ·アッカーマン
男子生徒はベッドから降りるとの背中を支え膝裏に手を差し込み難なく軽々と横抱きに持ち上げる。
小柄で細見な見た目からは想像の付かない行動には呆けた。
そのままベッドに運ばれ、男子生徒の顔が至近距離にある事に気が付く。
今この瞬間をもしも誰かに見られたら…、着任早々淫行養護教諭としてマスコミに叩かれ…、自分の人生は一発アウトだと脳内会議に激震が走り警鐘が一気に鳴り響く。
男子生徒の胸に手を当て少し押し返す。
『あ、ありがとう。もう大丈夫』
しかし男子生徒の身体は寸分も動かず、顔は徐々にへ近づいている。
『な…何!』
腕で押し退けようもびくともしない。
そしての首元に温かい吐息がかかる。
顔をそむけ身体は瞬時に強張った。
「…良い匂いだ」
数回匂いをかぐと男子生徒は満足げに保健室を去って行った。
(な…何だったの……怖い!男子生徒ものっそい怖い!)
新任初日は謎な男子生徒を除けば至って平穏に終わった。
退勤時間を迎え、見慣れない景色に落ち着かないまま帰路に着く。
自室のあるフロアに着くと唯一挨拶が済んでいなかった左隣角部屋の扉が閉まるのを目にする。
(あ!在宅してる)
は玄関先に置いてある挨拶品を持ち左隣のインターホンを鳴らす。
カチャンと鍵の音がすると扉が開いた。
『こんばんは、夜分に申し訳ありません』
深々と頭を下げ、顔を上げる。
『隣の305号室に越してきた……あ』
目の前にいる人物は保健室にいた謎の男子生徒だった。
「…あ?」
『…で…す』
「…リヴァイ·アッカーマンだ」
『アッカーマン君て言うのね、親御さんはご在宅かな』
「一人暮らしだが…」
『え、そうなの…えっとこちら挨拶品』
は挨拶品を差し出した。
「どうも」
『挨拶も終わったし、それでは』
「あぁ…」
軽く会釈をしは背を向ける。
その後姿を見つめるリヴァイの瞳は、まるで獲物を狙う猛禽類のように鋭いものだった。