第2章 case*2 三日月 宗近 へし切り長谷部
「…三日月、…なのか」
枕元へ置かれた木箱の中身は消えていた。
紅く揺れた瞳は長谷部へ向いた。
「言葉を交わすのは久しいな、長谷部殿」
「…何が、どうなっている」
「まぁ、そう構えるな」
しかし寝込みを組敷かれるを思えば構えないわかにもいかず、居ない筈の三日月にもどう対処すれば良いのか決めかねていた。
「巫女の血は…甘いだろう?長谷部殿も口にしたではないか」
「…血?」
「主の血は特別とみえる、巫女の処女の血を浴びて俺は目覚めたらしいな」
刀身に付着した筈のの血は消えていた、そして長谷部自身も血を舐めとった。
「…俺は、主の血を…」
「渇くのではないか?」
長谷部は喉元に指先をあてた。
渇きは更に酷く感じた。
「…水、…水を」
炊事場へ走り水道の蛇口を撚る。
勢い良く流れ落ちる水へ顔ごと浸けた。
喉元に流し込む水は、長谷部の渇きを潤してはくれなかった。
顔を上げ口元を袖で拭う。
桶に溜まる水が鏡の様に長谷部を映す。
三日月が照らす長谷部の瞳は水面に紅く揺れていた。