第2章 case*2 三日月 宗近 へし切り長谷部
手当が終わり置き去りの木箱を取りに縁側へ戻る。
しかし一つの痕跡が消えていた。
『長谷部さん…刀身に着いた血が…』
「…ありませんね」
確かに垂れ落ちたはずのの血痕はなく、何事もなかったかのように刀身は三日月に照らされていた。
『誰かが拭いたのでしょうか…』
「…皆、就寝についているかと」
は首を傾げながら木箱の蓋をのせ紐を結んだ。
『部屋に戻りますね、手当ありがとうございます』
「おやすみなさい、主」
『おやすみなさい』
木箱を枕元へ置き布団の中へ身体を潜り込ませる。
『おやすみなさい、三日月さん』
はそっと瞼を閉じる。
自室に戻り床についた長谷部は喉の乾きに目を覚ます。
起き上がり喉元をさすりながら炊事場へ向かった。
の部屋の前に差し掛かると微かな物音が耳に届いた。
寝付けないに白湯でもと思い声をかけ襖を開けた。
「主、眠れないようなら…」
眠るを組敷くように真紅の瞳を光らせる妖艶な…彼の姿があった。