第2章 case*2 三日月 宗近 へし切り長谷部
月の欠けた夜には決まって、大切そうに無垢な木箱を膝にのせ縁側へ腰を掛ける。
箱の蓋をそっと開き月を眺める。
『今夜の三日月もとても綺麗ですよ』
箱の中の刀身は折れても尚、月の光を浴びて美しく輝く。
『ねぇ…三日月さん』
途切れ途切れになってしまった波模様をそっと指でなぞる。
「…主」
背後から掛けられた声に驚いたの指は波模様を滑り、指先に鋭い痛みを感じる。
『ッッ…』
指先から流れる赤い雫はぽたりぽたりと波模様へ滴り落ちた。
「主!申し訳ありません!」
『いえ、少し驚いてしまって…』
の指を手に取り、少し薄い形の良い長谷部の唇がやんわりと包み込み赤い雫を舐めとった。
「あ、あの…長谷部さん」
『主、急ぎ手当を…』
長谷部に手を引かれ自室に戻る。
無垢な木箱の中には妖しく光る欠けた刀身だけが縁側に残った。