第4章 白い道【2】
『でも!』
「安心しろ。首を差し出せ、だとか物騒な要求はしない。」
『…危なくない?』
「あぁ。鷹の目に危険が及ぶことはない。」
あくまで俺が鷹の目に要求するのは情報の横流しだ。
知っていることがあるならソレを俺に教えればいいし、新しい情報が手に入り次第また連絡を遣せばいい。
あの男について調べろ、というような調査の依頼はしない。
下手にこちらから探りを入れてバレて、こちらの動きを気づかれでもしたら不味い。
鷹の目とあの男がどれ程渡り合えるかは知らねぇが、俺はまだ到底勝てない。
『…そう。』
カラは不満ながらも少しだけ安堵した表情を浮かべ、ソファにもたれかかった。
「あとで俺の部屋に来い。お前でも読めるような手頃な本を貸してやる。」
『…ありがとう。』
俺はそれだけ言って、カラの淹れたコーヒーに手を伸ばした。
…カラは自らの知識提供が対価だと思っていた、というような言い方だった。
…俺はカラに対価やら交換条件やらの話はしたことがない。
…鷹の目が手紙に残した、と考えるのが自然だ。
そして考えられる鷹の目の行動の理由、、、
それはたった一つだろう。
カラが、『自分の病の為に鷹の目が身を削る』ということに抵抗があることを知っていた上で、鷹の目は嘘を吐いた。
自分には何も面倒なことは降りかかっていない、迷惑などとは思っていない、と言いたかったのだろうか。
これはまた、随分と鷹の目はコイツに甘いようだ。
カラもカラで、やたらと鷹の目の身を案じていたな。
…なんなんだ、コイツらは。
親子か?いや、親子なら『おじさま、』とは呼ばないだろう。
親戚か?
それとも、愛人、、、
いや、いくつ年が離れていると思っている。
しかもまだ16のガキだぞ?
それに、酒も麻雀も雪も知らないアイツが男を知ってるはずがない。
待て、俺はまた何を考えている。
関係ないことは考えるな。
要は、鷹の目はカラを、カラは鷹の目をかなり大切に想っている、と。
それだけのことだ。
何も俺が気にすることはない。
俺は本のページを巻くり、無理やり意識をそちらに向けた。