第1章 白の呪縛
城へ戻る道中、子供はほとんど目を覚さなかった
今思えば異常なほど眠っていたが、当時はその方がかえって都合が良かった
俺は一体なぜ、この子供を助けたのか
赤髪との決闘を差し置いてまで、名も知らぬ女の願いを聞き入れたのか
城に着くまで幾度も考えたが、結局答えは出なかった
ただ、後悔はなかった
医者から受け取った、子供の着ていた血塗れの服に、この子供のものらしき名が書いてあった
【パトラ・D・カラ】
D…
パトラ、というのは母方の名なのだろう
ドフラミンゴの娘だと言っていた
その言葉は真なのだろう
ドフラミンゴがこの娘と母親をを殺しにきたのが何よりの証拠だ
あの男は…この娘が生きていると知ったら、再び殺しに来るのだろうか…?
どこか適当な島に放って帰ろうか
そんな思考が頭を過り、何年か後の未来にあの男に殺される姿まで想像する
「…」
勝手に助けた命をただ悪戯に死なせるのはなかなか寝覚が悪いものだな…
結局、明確な答えは出ぬまま城へ辿り着いてしまった
そのまま月日を過ごし、子供はみるみるうちに育ち、俺の中でもいつしかこの日の記憶は奥へと仕舞い込まれていった