第1章 白の呪縛
それから2、3年後、事件は起こった
白い町、フレバンスが、珀鉛病という死に至る病で滅んだらしい
俺はそれを新聞の一面で知った
当時は大した興味も浮かばなかった
ただ、カラの命を救った医師達が命を落としたことに関して、残念だ
その程度の思考
記事には伝染病という割にフレバンス以外の地域では1人も珀鉛病の感染者は出なかったとあった
伝染病の為にフレバンスを隔離した
そのことも世界に報じられていたが、果たして隔離だけでここまで完璧に病を閉じ込めることができようか?
初めの疑問が生まれた瞬間だった
そして、次に疑問に思ったのは、世界から珀鉛が消えたこと
高級品であったはずの珀鉛の加工品
それがある日突然、市場から姿を消していた
極め付けは、政府が珀鉛病の原因を探ることを禁止したことだ
表向きは病原体が漏れるとまた感染を引き起こす恐れがあるため
しかし、政府は今まで、危険な伝染病が流行すると、世界の技術を総動員して治療法を確立してきた
これは裏で政府が糸を引いている
それを裏付けるには十分だった
だが、進んだ時は2度と戻らない
死んだ者が生き返ることもない
今更何をするのも意味はない
俺は七武海の権限で、海軍の書庫に何度か足を運んだ
いつものただの暇つぶしの一環だったが、その日はそれだけでは済まなかった
そこで偶々耳にした
「珀鉛産業が滞って、市場は大混乱、か…」
「今まであんな毒にどれほど世界の金持ち連中が金をかけていたかってことだな。」
「可能な限りまで金を引き摺り出して、有毒性が露わになったら皆殺しねぇ…一番政府に金が入る方法だ。」
「中々えげつないこと考えますね、政府は。」
「本当にな。
フレバンスの連中は中毒になるまで珀鉛を掘らされ続けて、用がなくなればゴミのように殺されて、、、気の毒に。」
「まぁそれでこっちの財布は厚くなっていくんですけどね。」
「それもそうか。はははははっ!」
そこで俺は知った
フレバンスは、人によって滅ぼされた
珀鉛病は中毒、感染ることはない
感染ると周囲に思わせることで、人に人を殺させた
あの国は政府の犠牲となったのだ、と