第4章 白い道【2】
『…自分で買うって言ったのに…』
「まだ言ってんのか。」
ローは心底どうでも良さそうに溜息をつく。
エターナルポースの店を出てから、ローはどうもご機嫌だ。
「オイ、次、ここ入るぞ。」
『うん。』
ローが連れてきたのは服屋さん。
何か欲しいものでもあるのだろうか。
「次は冬島らしい。適当にコートでも買っておけ。」
『いや、私はいいよ。このコートあるし。』
おじさまとサイズ違いのロングコート。
サイズ違いと言っても真っ黒だから別にお揃いとか、そんなのじゃないけど、
「お前、舐めてんのか。雪の降る極寒の地だぞ。」
『ゆき?』
ゆき?
雪のこと?
あの、白い雨みたいな。
雪って物語の中の話でしょう?
あんなに綺麗なもの、現実にあるの?
「お前、雪を知らないのか。」
『あれは物語上のものでしょ?冬島には行ったことがあるけど、雪なんて降ってなかった。
少し寒くて、とにかく乾燥してた。』
正直、初めて冬島に行く時はかなり期待していた。
雪が綺麗であることは本で知っていたから。
でも、実際に訪れた島は銀世界とは程遠く、普通の島より少し気温が低いだけでかなり拍子抜けした記憶がある。
「…グランドラインでは雪は降らないのか?」
『だから、雪がそもそも空想上のものでしょ?』
「…雪は、存在する。」
ローが真剣な目をしてそんなこと言うものだから、驚く。
現実主義者だと思っていたけど、実はロマンチストなのだろうか。
『…えっと、、、そう、なんだ?』
「チッ、もういい。とりあえず適当に買っておけ。
要らないなら捨てればいい。買って損はないだろう。」
ローはズカズカと店内に入って行った。
なんなんだ。アイツは。
雪を知らない?
グランドラインや東の海、北の海までやってきたことがあるというのに、何故雪を見たことがない。
冬島に行ったと言っていたな。
確かに、冬島でも夏なら、雪が降らないのもわからなくはないが、、、
無知だ。
とにかくアイツは無知すぎる。
今まで見てきた世界が狭すぎて、中々外への意識が低い。
鷹の目は一体、どういうつもりでアイツを育てたんだ。
俺はイマイチペースを掴めない相手に密かに頭を抱えた。