第4章 白い道【2】
目ぼしい食材をどんどん買っていく。
なるべく保存の効くものを選びながら、尚且つ栄養素が偏らないよう考えながら選ぶ。
ローは適当でいいと言うが、食を任されている立場上、そうはいかない。
パンを買っておこうと思い、その売り場へ向かう。
確か船にパンは全く無かったはずだ。
「オイ、テメェ、、、ソレを買うつもりか?」
買い物に全く口は出してこなかったローが、パンを握る私の手を見つめてそう呟く。
『え?そうだけど、、、どうしたの?』
「そんなもの買う必要はない。米があれば十分だ。」
『いや、米も買うけど、パンもいるでしょう?』
「いらねぇ。」
頑なにパンを買うのを嫌がるロー。
この人はなにがしたいのか。
『ロー、本当にどうしたの?別にそんなに高いものでもないし、』
「…俺は、パンが嫌いだ。」
『…………は?』
「だからそんなもの船に乗せる必要はない。」
パンが嫌い?
だから船にはいらない?
『食べなきゃいいじゃん。』
「…」
『みんなにパン出す時はローにはおにぎり作るから。それじゃダメなの?』
「…」
何なのだ。
本当に。
パンに恨みでもあるのだろうか。
なにも言わなくなったローを無視してパンを買った。
確かにパンは無くても生きてはいけるが、生憎私はパンが好きだ。
別に溺愛している訳ではないが、偶に食べたくなる。
そんな時くらいみんなあるはずだ。
ローはやっぱり機嫌が悪かったが、今日の晩ご飯の魚を選ぶ様に言ったら幾分か顔が晴れたような気がする。
結局、ローは鯖と鯵と鮭を買ってきた。
これで3日間の晩ご飯は焼き魚に、朝はおにぎりにしろ。
それでパンの購入は許す、と。
それだけ言って、荷物を抱えて歩き出した。
ローはかなり好き嫌いが激しいらしい。
私はこんなつまらない事だが、ローのことを知れて少し嬉しかった。
いつもポーカーフェイスで、人間らしさが感じられないことが多いローだが、人間らしい一面を見た私は少し顔を綻ばせた。