第4章 白い道【2】
私はローと一緒に街へ出かけていた。
活気があって、どこからか楽器の音色が聴こえてくる。
『賑やかな街。』
「あぁ、」
『別に、買い出しくらい私1人でも大丈夫だったのに。船に戻っててもいいのよ?』
「お前、食材だけでどれほどの荷物になるのか分かってんのか。」
『まぁ、それなりに重いとは思うけど、、、それなりに鍛えてるし、その辺の子達よりは持てるから大丈夫。
それに、ローはあんまりこういう賑やかな街は苦手そうだし。』
「別に、、、嫌いじゃない。」
へぇ、意外。
ローはいつも部屋で本を読んでいることが多い。
煩い所とか、人が多い所とか、こういう陽気な雰囲気はなんとなく似合わないし、苦手なものだと思っていた。
『意外ね。』
「生まれた街は毎日祭り囃子が聞こえていた。」
『へぇ、楽しそう。』
「あぁ。この街より、活気のある街だった。」
私はこんな賑やかな街には殆ど来たことがなかった。
おじさまがこういう街は好まなかったから。
だから、ローの話す、ローの生まれ故郷に興味が湧いた。
『ねぇ………』
もっと聞かせて?
そう言おうとして、ローの顔を見上げた。
けれど、、、
どうして?
どうして、そんなに遠くを見ているの?
ローは、目の前の栄えた街を見てはいなかった。
それよりももっと遠く。海の向こうを見ていた。
貴方の故郷は、このグランドラインからは確かに遠いかもしれないけれど。
でも、そんな、虚無に溢れたような、遠くを見ているようで、その瞳になにも写っていないのは何故?
貴方の故郷は、栄えた、幸せな街なのではないの?
「どうした。」
『あ、、いえ、なんでもない。』
「…着いたぞ。」
目の前には食材が並ぶ市場。
いつの間にか目的地に着いていた様だ。
私は果物を手に取るフリをして、ローの顔を盗み見た。
そこには、いつもの鋭い目をしたローの姿。
まだ、貴方にそんなことを聞く権利は私にはない。
貴方にとって私は患者で、ただの乗り合わせ。
でも、いつか私がそうじゃなくなったら、いつか、貴方の船に乗ることを許されるなら、私は貴方から、貴方の話を聞きたい。
何故だかわからないけど、貴方のことを知りたいと、そう思った。