第3章 白い道
「あのさ、カラ、病気じゃん?」
「何を今更。珀鉛病だろ?」
「うん。それでこの船に乗ってるんだよね。」
「あぁ。それで、やっぱり普通の病気とは訳が違うし、今まで俺たちには想像できないような苦労とかあったと思うんだよ。」
「…キャプテンも同じ病気だったよね。」
「確かに。あのキャプテンが唯一俺たちにあまり話したがらねぇ話だよな。」
シャチは昔、ローに珀鉛病について聞いたことがあった。
本当に政府が揉み消したのか、と。
世界政府が本当にそんなことをするのか、と。
まるで信じられない、というように。
ローは人を殺せそうな目つきでシャチを睨み、それ以上口を開くな、と言いたげな顔をした。
その殺気は凄まじく、息をするのも憚られる程だった。
俺たちが息を呑み、冷や汗を流したのを見て、キャプテンは無言で部屋を出て行った。
…最後に見えた顔は、悲しそうな、怯えているような、そんな顔で、いつも強気のキャプテンからは想像がつかないくらい、弱弱しい顔だった。
シャチはそのことを思い出したのか、急に笑みを消し、真面目な顔つきになった。
「…かなりの迫害を受けたらしいとは聞いたけど、カラもやっぱり、、、」
ベポはただ、悔しそうだ。
今でこそ、ローは自分たちに心を許し、軽口も言い合える関係になった。
だがカラはどうだろうか。
以前、気にしない、ということを分かってもらえるよう、シャチは軽く言ってのけた。
だが、咄嗟にカラは臨戦態勢を取った。
それ程、過敏になる程、世間はカラを、ローを追い詰めたのか。
それ程までに、心に消えない傷を刻んだのか。
ベポは、憤りを感じた。
彼の中で、既にカラは仲間だ。
例え、病が治って彼女が船から降りたとしても、仲間であることには変わりはない。
そう思うくらい、彼の中での彼女は大きくなっていた。