第3章 白い道
「診るぞ。」
もう一度そう声をかけ、服を上げた。
今度は少しピクリと動いただけで、抵抗されたり、怯えたような目を向けられることはなかった。
かなり上まで上げたので、流石に気にするだろうと思い、胸元にブランケットを掛けてやった。
…それにしても…。
このデケェ五本の傷はなんだ。
左脇腹の肋骨あたりから臍の横までの大きな傷痕。
刃物ならこんな風な傷痕は残らねぇ。
角度的に爪のような気もしないことも無いが、動物の爪ならもっとガタついた痕になる。
正直、鷹の目に見せられた時も、アザよりもこちらの方が気になった。
だがこちらの傷はもう完治しているし、今更できることはない。
今俺が治すのは珀鉛病だ。
目に見える限りの珀鉛は傷の周りからじわじわとその周辺に広がっているように見える。
と、俺は五本の傷以外にも数カ所傷が残っているのに気がついた。
まぁ、剣士やってたんだ。傷くらいあるのは当然か。
…いや、待て。
何故アザの上だけしか無い。
それに、この傷はそんなに浅くはない。
後で聞くか。
それより先に、中の方を見ておきたい。
ナートの糸が珀鉛だったなら、内臓ももろで珀鉛に当てられてる筈だ。
「Roomーーーースキャン」
…やはりか。
縫った痕がある。
カラを治療した医者はかなり優秀だったんだな。
縫い目が綺麗だ。
当時はまだ、かなり小さな子供だったはずだが、、、ここまで綺麗に縫える医者はなかなかいない。
珀鉛との癒着が酷い。
やはりこれはまともな設備がないとダメだな。
特に内臓系は何かあった時にすぐオペが出来なきゃ命に関わる。
…中の方も皮膚と同じように、縫い目からじわじわ広がっているな。
あ?
そろそろいいか、と思い、ルームを解除しようとすると、左の肺に白い部分が見えた。
丁度肺の真横。まだ小さいが、肺にも珀鉛が飛んでいた。
「チッ」
まだ自覚症状はないだろうが、ここはデカくなると厄介だ。
肺はあまり薬が効かない。
肺疾患は普段の病でもなかなか面倒だ。
面倒なところに転移しやがって。