第1章 白の呪縛
まるで敵を見据えるような、これまで向けられたことのないほど鋭い視線に射抜かれ、気がつけば震える声で返事をしていた
生き物としての生存本能とでも言うべきか…圧倒的強者の前に、首を縦に振る他なかった
城へ戻るとおじさまは私から旅の荷物を取り上げ、風呂の中へ押しやった
自分だってずぶ濡れなのに…
シャワーに頭を打たれながら、こんな時ですら感じるおじさまの優しさに目頭が熱くなった
十分に温まってからおじさまの部屋へ入ると、彼は窓を叩きつける雨を、ただじっと、見ていた
濡れた外套や帽子は部屋に掛けられ、おじさま自身の髪もまだ少し濡れている
そんな中、いつもは何も置かれていないテーブルには小さな白い…服……?だろうか…
綺麗に畳んである割に、赤黒い染みがべったりと付いているそれ
私はなんとなくそれを手に取り、そっと持ち上げた
「もうあの日から10年以上になるか…」
『…え?』
「俺がお前を拾ってからだ…」
『…』
「その服は当時のお前が着ていたものだ。」
その言葉に私が思わず手の中にある布を見つめると、おじさまは外を見たまま、続けた
「あの日も、こんな雷雨の日だった。」