第3章 白い道
「…痛みはないのか。」
バタバタとした甲板の中、ローが私の左腹を見ながら聞いてきた。
急に珀鉛病のことに触れてきたローに少しドキッとしたけど、ベポ達は組み手?に見えなくもない乱闘のような鍛錬をしててこっちには全く関心はなさそうだった。
『うん、最近はそんなに。』
「…そうか。なら良いが…何かあったらすぐに言え。」
こんな病気なのに、、、ちゃんと心配してくれてる。
その事実がすごく嬉しかった。
だから余計に、胸が痛い。
『うん、ありがとう。』
この言葉だけで、精一杯だった。
痛みは、正直言うとある。
寝る前とか、横になると痛くなる。
その時はじっと、その痛みが引くまで待つ。
耐えがたいものではあるが、耐えればいずれマシになるのは知ってる。
叫び出したいくらいだが、ただ、布団を握りしめて、耐える。
それだけ。
ローは、珀鉛病なんて診るのは初めてだろう。
本来、今存在し得ない病気だ。
ローに珀鉛病が伝染病でないという知識があるだけでも驚いたくらいなのに…
ローは今は医師として、私という患者と珀鉛病という病と向き合ってくれている。
でも、、、それが変わってしまうのが怖い。
おじさまに連れられた病院でもそうだった。
初めはにこやかに症状を聞いてくれた医者も、私の肌を見た瞬間、おぞましいものを見るような目になった。
向けられていた笑顔が殺意と恐れに変わる瞬間を何度も見てきた。
…確かに、ローはおじさまを除いて、今まで会ってきた人の中で初めて私を否定しなかった。
ベポ達も、私が珀鉛病なのを知ってて良くしてくれる。
だからこそ、みんなが変わってしまうのが怖い。
心の内を許すことが恐ろしい。
弱くて臆病で、ずるい。
医者であるあなたのことすら信じられない。
本当に、ごめんなさい。