第3章 白い道
甲板で木刀を持ち、互いに向き合った2人。
クルー達は息を潜めて見守る。
「やっぱりキャプテンが勝つかな。」
「そりゃそうだろ。俺たちのキャプテン、今まで負けなしだぜ!」
「だよな!」
「能力は使わねぇから安心しろ。」
『いや、使ってもいいよ。』
イマイチローの能力はよくわからないけど、武装色を纏えば関係ないはず。
それに、そうすることで私の修行にもなる。
「いや、使わない。俺は剣士のお前に用がある。」
『そう。』
なら、私も武装色は使わない。
そうじゃないとフェアじゃないような気がする。
「…いくぞ!」
『ええ!』
ヒュッーーーーガッ!
勢いよく木刀同士がぶつかる。
…確かに、強い。
ローは頭がいいから理屈で身体も動かしてると思ってたけど…この速さはそんな戦い方をしてる訳ではなさそうだ。
一太刀一太刀が鋭さを持っている。
本能、というような野生な感じはしないけど、体に染み付いたような動き。
きっと幼少期から刀を振ってきたんだろう。
確かに強い剣だ。
…ただ、柔軟性が足りない。
ーガッガッーーーーガガガッ!
クソっ
俺はかなり本気で打っている。
だがなんだ、この女の余裕は。
男女の差を取っても、体格を取っても、年齢を取っても、俺の方が確実に有利なはずだ。
それなのに、まだ本気を出してないような、そんな余裕まで感じるこの女の太刀筋が気に入らない。
確かに、力と体力だけなら俺の方が上だろう。
だが、それ以前にこの女とは比べもんにならない程の実力差を感じる。
なんだ、何が足りない。
と、その時、
ーバキィ!
俺の木刀が折れた。
『あっ!ごめん!覇気使っちゃった。』
ハキ?何を言っている。
そんなことはどうでもいい。
それ以前に俺は負けていた。
それだけだ。
俺は独り小さく舌打ちをした