第8章 白兵戦
射程内に入ると、軍艦は容赦なく砲弾の雨を降らせる。
砲弾を防ぐことができるローとカラはそれぞれの方法でそれらを逸らしていた。
「Roomーータクト」
『ふっ!』
ローは能力を使って砲弾を海に叩き落とし、カラは砲弾を刀の背を伝わせて空中で爆発させたり、砲弾を真っ二つに切り裂いたりしていた。
ローは砲弾を刀の背に伝わせるカラを見て感心した。
まるで曲芸のような動き。
鉄の塊であるはずの砲弾。
その重さを感じさせないような軽やかさと繊細さ。
その動きには少しも無駄がない。
砲弾を2つに斬る時も残骸や爆風が船に影響がないようにしていて、ふわりと舞うドレスの裾と黒い髪がまるで剣舞のように船の上を彩る。
『ロー?』
「っ!」
気がつくと、軍艦は自分の能力の範囲内に入っており、ベポ達はまだ乗り込まないのか、と言わんばかりの視線を向けていた。
…知らぬうちにカラの動きに見惚れていた。
「Roomーシャンブルス」
ローは先程のカラの姿の残像を振り切るように頭を一つ振ると、急に目の前に敵が現れて動揺している海兵の中へ身を投げた。
ロー達が軍艦へ向かったのを見届けると、カラはこちらに向いた砲撃台を潰し、距離を詰めてくる軍艦の上の気配を探る。
大佐…少将くらいか?
軍艦だから中将でも乗っているんじゃないかと少し焦ったが、それほど強い気配はない。
中将にもなるとその他の将校とは格が違う。
「カラ…」
『大丈夫よ。
ローだって本気で全員を相手する気はないはずだから。』
シャチが固定された腕を悔しげに見つめ、不安を吐露するかのように彼女の名を呼ぶ。
その気持ちもわかる。
軍艦一隻を壊滅させるまで追い込むのは私たち全員で掛かっても無理だ。
近くに支部があったら尚更。
それほどに軍艦一隻当たりの海兵の人数は多く、軍艦を出せるほどの権力を持つ1人の将も強い。