第8章 白兵戦
「…オイ」
出港して上手く海流を掴み、みんなほっと一息ついて好きなように過ごしている頃、ローは甲板で本を読んでいた私に近づいてきた。
『どうしたの?』
「…その本。」
私が開いていたのは簡単な方の医学書。
私はなんとなくローの言わんとすることがわかって、口を開いた。
『あぁこれ?
ローがドラム王国でくれたもの。
今のところわからないところはないけど、面白いわ。』
「…」
『医者のいる船に乗ってるんだもの。
医療の知識が多少ある方がローにとってもいいかと思ったんだけど、、、』
ローはおじさまから対価をもらうから良いと何度も言うけれど、本来それは私が払わなければならない。
本当はただの興味で言い出したことだけど、ローが医者である以上、こんな知識をもつ人間が同じ船に乗っていたら何かと便利なのではないかと思うようになった。
…戦力としてだけではなく、他の面でもこの船に必要な人間になりたい。
「…そうか。
確かに、医療の知識を持つクルーがいるのは助かるな。
それより、、「キャプテン!!海軍だ!!!」
『っ!』
見張り台に居たペンギンが後ろの方を指差して叫ぶ。
その声に反応して私もローもそちらを見ると、軍艦が一隻。
「…振り切るには少し近すぎるな、、、」
『どうする?』
「…」
『…私は海軍が相手なら手出しはあまりできないけど、、、船とシャチなら守れるわ。
でも、ロー達の方がどうしても危なくなったら行くから…』
手配書が出されないためにも、海軍に顔を知られるわけにはいかない。
「…応戦する!
ベポ、ペンギンは俺と来い!!
シャチは船の操舵を、カラは船を守れ!!」
「「「アイアイ!!」」」
『了解』
ヒュルルルルーーーードーン!
軍艦からの砲弾が船の手前に着弾した。
その音はまるで、海戦の開始を告げるゴングのようだった。