第2章 白い光
白熊さんと買い物を始めてもう数時間
船の航海で必要なものは大抵揃ってきた
もうあとは一旦荷物を置いたら自分の買い物に行ってもいいだろう
少し…直接的な表現をしすぎたか…
後ろを何も言わずについてくる白熊さん
私の言ってしまった言葉は想像以上に彼の胸を打ってしまったらしく、誰が見てもわかる落ち込みように少しづつ罪悪感が湧いてくる
だけど言ったことは事実だし…
落ち込んだって事態は変わらない
だったら自分なりに足掻くしかないじゃないか
私は背中に感じる負のオーラに少しの気まずさを抱きながら街を歩く
と、反対側の道で子供が転んで泣く姿を見つけた
兄弟…だろうか?
兄と見られる子供が泣いている子供に駆け寄って声を掛ける
「大丈夫か!?」
「うわぁあぁ!痛いよ…!血が…」
「あちゃ…結構ガッツリいったな…」
その言葉通り、擦りむいた膝は流血、咄嗟に着いた手や腕、頬にも傷がある
弟の方は自分の怪我の程度を確認すると更に泣き叫ぶ
兄とみられる男の子は困ったように少し眉を下げて弟のそばに膝をついた
「痛かったな…
でももう泣くな、余計染みるぞ?」
「わぁぁぁぁあ!!!」
「ほら、背負ってやるから…
泣いても痛いのには変わらないんだ。
あっちの公園の水道で洗おう。」
そう言って兄はまだ泣いている弟を背負い歩き始める
兄弟の姿を見ながらなんとなく、今自分の抱えるモヤモヤとした感情がわかった気がした
子供の頃のことを思い出すからか…
私もおじさまの容赦ない稽古が辛いと、おじさまを乗せた船を1人で操るのが怖いと思った時期はある
泣き言を言いそうになったり、実際部屋のベッドで泣きじゃくったりしたこともある
出来なくて落ち込んで、それでもできるようになるまでおじさまは逃してくれなくて、慰めの言葉も優しい言葉も何ひとつ掛けてはくれなくて
不安や悔しさ、焦りの気持ちでいっぱいだった
白熊さんの姿がその何も出来なかった自分の姿と重なるから、こんなにも苛立ってしまうんだ
ドン
「っ痛ぇな…前見て歩け!」
「スミマセン…」
『…』
「図体デカいクマでスミマセン…」
『…』
一般人の若者にすら舐め腐られてる落ち込んだ白熊さんの方を振り返る
…私は…あの頃の私はどうしていただろう…?