第8章 白兵戦
『っ!』
隣のローの声で、私の頭の中は一瞬で冷静になる。
私はピタリと動きを止め、ローの方を見た。
ローはこちらには目を向けず、じっと目の前の男の目と対峙していた。
その瞳はベポの姿を捉えたときの怒りを孕みながらも、冷静で、しっかりと周りの様子まで目に入っていた。
「Roomーシャンブルス」
「な!?」
『!』
瞬きする間にローの手元に現れたのは、さっきから男が手の上で弄んでいたベポの起爆装置。
と、ローはサークルを展開したまま、私の元に近寄って来た。
「ベポのことは任せろ。策がある。
お前は今から船へ行き、ペンギンたちと船を守れ。」
『え、』
「シャンブルス!」
『っ!?』
パッと放り出された場所は、カジノの外。
その瞬間、カジノの中からは酷い怒号が聞こえて来た。
『っ、船に!』
私はローの言葉で冷静さを取り戻し、ローの言うように船へ走った。
…ローの方も、ベポの爆弾も心配だけど、、、ローのことを信じる。
少なくとも、敵の挑発に乗って冷静さを無くすような私よりは、あの場所はローの方が適任だった
私はカジノの喧騒を背中に感じながら、船への道をひた走った。