第8章 白兵戦
コンコンコン
『はーい。』
「俺だ。」
『どうぞー』
ガチャ
夜、ローはいつものように銀のトレーを持って部屋に来てくれた。
ただ、いつもと違うのはもう一方の手に大きな袋を抱えている点、それに、なんだろう。
難しい顔をしてる。
「カラ。」
『?なぁに?これ。
船に帰った時持っていたものよね?』
ローは手に持っていた袋を私に差し出す。
目で開けてみろ、と言われたような気がするので、開けるね、と一言声をかけてから開く。
『わぁ、どうしたの?これ、、、綺麗。』
袋の中に入っていたのは黒のドレスとヒール。
ショート丈ではあるが、チュールが足首までを覆っていてあまり気にならない。
胸元に星のように散りばめられた小さな石たちがキラキラと輝いていて、とても質のいいものであることは容易にわかる。
「明日、カジノのVIPに入る。
これ着て着いてこい。」
ドレスコードがあるのか。
おじさまと一緒に何度かドレスコードのあるお店やカジノには行ったことがあるから、ドレスはいくつか持っていたけれど、その全ては城においてきてしまった。
『…でも、アザ見えちゃうかもしれないから、、、これは着れないわ。』
私がおじさまの元で持っていたドレスたちも、ロングのものであり、露出はほとんどなかった。
でもこのドレスは、、、背中がガッツリ空いているだけでなく、肩まで生地が無いため肩も胸元も全部見えてしまう。
…身体中のアザがどれほどあるか、全ては知らないけど、ここまで露出がひどければどこか見えてしまっているかもしれない。
そう思うと着ることなんて出来なかった。
ごめんなさい、
そう言ってドレスを返すけど、ローは受け取ってくれない。
「問題ない。
お前のアザの位置くらい全部知ってる。
…こんな島だ。ドレスも大して種類がなかった。
そんな安物で下手なデザインのもので悪いが、、、明日だけだ。」