第8章 白兵戦
「…なんだ。」
…やはり、来ると思っていた。
内心笑みを浮かべながら、しかしそれを決して表情に出すことなく答える。
「…北の海のトラファルガー・ローだな。」
「だったらどうした。」
俺がそう言うと、俺の後ろにいたペンギンとシャチが少し前に出る。
それに合わせてあちら側の屈強な男達も少し距離を詰めてくる。
「先程の勝負、見事なものだった。
…もしよければ、明日はこんな小せぇ賭けではなく、VIPブースでやらないか。」
「ほぅ。」
…そう。
ここからが本番だ。
さっきから俺が勝ちを重ねていたのも運じゃねぇ。
あいつらが意図的に俺を勝たせていた。
VIPブースとやらで使えるほどの元金を俺が手にするために。
「…興味があるな。」
俺はそう答えてニヤリと笑う。
あいつらは俺達をそこへ招き、逆に大金を巻き上げるつもりだろう。
払えないのならミンク族の仲間でも売れ、と。
そうして金を搾り取った上、俺の首も取るつもりだろう。
それほどの自信があるらしい。
…だが、そんなことはどうでもいい。
俺はさらにそのVIPブースとやらでも稼ぐつもりでいる。
こいつらの術中に綺麗にハマるほどバカではない。
それに、ベポにはカラが付いてる。
後ろの憂いもない。
「そうか。
…ただな、VIPブースはココとは格が違う。
当たり前だがドレスコードもある。
それなりの格好をしてきてもらわねばならん。」
「構わねぇ。」
面倒だが、船には一応そんな服も置いてあったはずだ。
「…じゃあな。」
俺は踵を返して賭け場に背を向けて歩く、
「あぁそうだ。
言い忘れていたが、、、」
「VIPブースはパートナーの同伴が必須だ。
それなりに見目の良い女を連れてくるんだな。」
は?
3人の男はそのまま背を向けて帰って行った。