第8章 白兵戦
『うーん…ベポ、どう?
少しはマシ?』
「うん!風も通るしだいぶ体が軽くなった気がする!」
『お風呂の後も乾くの早くなるかもね。』
看板でベポの毛を刈った。
ひとまわり小さくなったベポがふるりと体を震わせると、身体中から短い毛が溢れる。
『ベポ、そのままお風呂入ったほうがいいわ。
船の中が毛まみれになっちゃう。』
「僕も今すごく気持ち悪い、
はいってくるよ!」
ベポはてとてとと風呂場の方へ歩いて行った。
私はその間に看板の毛を海へ払う。
『ん?』
視られている。
『…』
私は傍に置いていた小夜を腰に差し、何事もないように手を動かす。
…視線は感じるが殺気は無い。
ただ視ているだけ。
…これは真面目に船番しておかないとな。
私は船内に戻るのは辞めて、看板の見張り台で本を広げた。
ー
ーー
ーーー
ーー
ー
「丁だ。」
「勝負!!
ー三、五の丁!!!」
「ウォォオオオ!」
もう何度目かの勝負。
着々と手持ちの金を増やしていくこの男。
ここまで全勝中の海賊に周りの男達は興味津々だ。
…そろそろ頃合いか。
男は片手を挙げてここまでで辞めておく意思を示し、何倍にも膨れ上がった金を受け取りに行く。
「キャプテンマジスゲェ。」
「キャプテンキャプテン、もう一戦くらいやっていきましょうよ〜
…あ!俺ルーレットやりたい!!」
その後ろを歩くツナギを着た男2人。
そんな彼らの言葉に返事をすることなく、長身の男はスタスタと長い足を運ぶ。
「なぁ、アンタ。」
と、その一行に声をかけたのはスーツを着た3人の男。
…彼らは賭け場の従業員だった。