第7章 白波
「…っ!」
ローは少しだけ距離を取って真横に刀を振るう。
その刃の間合いでは私に届かない。
「…これも覇気か。」
『胡蝶蘭ー峯黒』
絶妙なスピードと光、そして相手の心理。
それらを駆使して、まるで胡蝶蘭のように舞う黒い花。
それを幻覚のように視界にチラつかせる。
『終わりよ。ロー。』
スッ
彼の頭上から優しく首筋に木刀を添え、目の前に降り立つ。
ローは急に上から現れた私に一瞬驚き、首に触れた木刀を見て、ため息を漏らした。
「…チッ」
『ふふ、』
私も木刀を下ろして少し距離を取る。
そして私たちはどちらかともなく腰を下ろすと、心地の良い海風に吹かれながら熱った身体を冷ます。
『ふぅ……気持ちいい風。』
「…嗚呼。
…カラ、覇気を全く纏わせずに腕を前に出してくれ。」
『こう?』
「あぁ。Roomー」
スパン!
ボト
『あら。』
刃は私の腕に触れてないが、軌道に入っただけで腕が落ちた。
…さっきの攻撃はそういう意味か。
…何度経験しても不思議な感覚。
離れていてもちゃんと指は動かせるんだもの。
私は腕を元の場所にくっつけると、ローは言う。
「…次は覇気を纏わせて前に出してくれ。」
『わかったわ。』
ブゥン
黒く染まり、武装した腕をローの前に出す。
スッ!
『…』
「…」
先程のようには私の腕は落ちない。
ローが刀を置くと、私も武装を解いて腕を下ろす。
「覇気ってのは硬くなり自然系能力者の実体を捉えるだけじゃねぇのか。」
『ローのような能力は初めて見たから正確なことは言えないけれど、、、
武装色を纏えばある程度の攻撃はダメージを受けず無効化できるから、この覇気は防御としてもよく使われるの。
だからローの切断能力も無効化されたのかも…
勿論、自分の覇気が相手のものを上回っていたら覇気の上から攻撃をすることもできるわ。』
「なるほど。」
ローはそれを聞くとしばらくの間空を見上げて何かを考えていた。