第7章 白波
この訳の分からないルークをさっさと排除するか。
それとも誘いに乗ってあげようか。
若しくは全てを無視して攻めに出るか。
私はしばらく考えて、ホーンを動かした。
ルークには気を惹かれるが、アレはきっと罠。
あの駒は無視して、元の誘いに乗ろう。
わざとホーンを使ったのは1番弱い駒だから。
ローの考えが読めない以上、ここでクイーンのような強い駒を出すべきではない。
「ほう。」
ローはそう言って先程のルークをさらにこちらに進める。
私はキングをさらに奥へと移動させる。
ローはルークをまた動かす。
…と、奥のビショップがきな臭い。
私は手持ちのビショップをぶつけて駒を消す。
「…気づいたか。」
『えぇ。』
それによって私のビショップもいい場所に着いた。
私の思う通りに動けばあと2手でチェックメイトだ。
『?』
?どういうことだ。
ローはわざわざキングを前に出してきた。
そんなことをしたら2手もないうちに今すぐにでも…
『あ、』
「クク」
さっき動かしたビショップ。
アレが動いたせいで出せる駒がない。
…あの一瞬で手が出せない位置を計算していたというのか…
仕方がないのでキングを取るのは一旦やめて、自らの自衛に入る。
クイーンを使って周りを固めた。
「クク、かなり楽しませてもらったが、、、これでチェックメイトだ。」
『!?』
しまった。
さっきクイーンはローのルークに引っ張られて敢えてあそこに置いていたのに、キングの動きが気になって移してしまった。
あのルークは罠だった。
それもただの罠じゃない。
何十にも重なって練り上げられた罠。
『…完敗だ、、、』
「俺はかなり楽しかったぞ。」
『私も楽しかったけど、、、悔しいな…』
「オイオイ、剣の手合わせでこっちは負けてんだ。
チェスくらい勝たせろよ。」
『ふふ、アハハハッ、確かにそうね。
あー、面白かった。またやろう?』
「あぁ。」
私はそう言って駒を指で弾いた。